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〜 OB日記 〜

Vol 52. 小林 圭介

 

 

フィールドは探究の宝庫!?

 

 

 皆様、はじめまして、

 2007年卒の小林圭介と申します。

 

 

 現在は、縁あって、

 島根県邑南町(おおなんちょう)という人口1万人の町にある、

 島根県立矢上(やかみ)高等学校という学校の

 魅力化コーディネーターという仕事をしています。

 

 

 

 この度、宮本誠先生から

 「現役・OBに、自由に、字数は無制限で、

  OB日記に投稿してほしい」という依頼をいただきましたので、

 自由に書いていこうと思います。

 

 

 

 

 前述の通り、

 私は県立高校の魅力化ということに取り組んでいます。

 

 

 

 矢上高校がある邑南町は、

 これを読んでいるほぼ全ての方がイメージする

 「田舎」にある高校です。

 

 

 

 邑南町は今話題の広島県安芸高田市の隣にある町で、

 広島市に一番近い島根県の町です。

 

 

 高校よりも高い建物は他になく、

 山や畑、田んぼに囲まれています。

 

 

 三江線と呼ばれる電車は

 数年前に廃線になりました。

 

 

 コンビニはありますが、

 22時に閉まります。

 

 

 高齢化率も45%を超えており、

 少子高齢社会です。

 

 

 

 

 矢上高校は、

 普通科と農業や畜産、工業を学ぶことができる産業技術科という

 2つの学科がある高校で、

 

 

 1学年3クラス、1クラスおおよそ35名で、

 全校生徒250名程度の高校です。

 

 

 広島城北高校だと

 1学年の規模かもしれませんね。

 

 

 

 

 お気づきだと思いますが、

 中学生も減り、入学者が少なくなると

 学校は統廃合になります。

 

 

 こうした事態を防ぐためには、

 地域の中学生はもちろんのこと、

 全国から中学生が来たいと思う学校にし、

 来てくれた生徒が通える環境を整える必要があります。

 

 

 「統廃合を防ぎ、

  全国から中学生が学びたいと思ってもらうように

  様々なことをすること」

 

 これが「高校魅力化」です。

 

 

 

 

 具体的には、

 東京や大阪、在校生がいる広島などに行き、

 中学生に向けて説明をしたり、オンラインで説明をしたり。

 

 

 魅力あるカリキュラムを作るため、

 地域の人に関わっていただいて教科の授業を作ったり、

 

 

 総合的な探究の時間のカリキュラムや

 授業案、ワークシートを設計したり。

 

 

 

 さらには、

 学校の持続的な発展のために

 コンソーシアムと呼ばれる団体を立ち上げたり。

 

 

 

 なかなか一言では

 説明がつきにくい仕事をしています。

 

 

 

 

 高校魅力化は島根県の海士町にある、

 隠岐島前高校という高校から2008年に始まり、

 

 

 2011年・2014年に

 「離島・中山間地域の高校魅力化・活性化事業」として

 島根県内に広がり、

 

 

 私が関わっている矢上高校も

 約10年前から高校魅力化がスタートしました。

 

 

 

 

 今では、同様の取り組みを

 北海道から沖縄まで、

 もちろん広島県も全国募集をしたり

 魅力あるカリキュラム(部活動も含む)、

 地域との連携が盛んな高校が増えています。

 

 

 

 

 在校生の皆さんには

 「進路」という言葉を、

 耳にタコができるほど聞かされていると思いますが、

 

 

 自分自身、

 このような進路を高校時代に決めたわけではありません。

 

 

 

 そもそも高校魅力化という事業も、

 2008年に始まっており、

 私の高校時代にはあり得ない仕事です。

 

 

 

 

 そして10年以上経ちましたが、

 私のような仕事をしているコーディネーターは、

 全国でも100人いない状況です。

 

 

 

 

 

 思い返すと、

 高校時代に「進路を早く決めなさい」と言われたことはありますが、

 

 

 進路をどのように考え、

 どのように決めるのかという方法論は学んだ記憶がありません。

 

 

 「考えろ」と言われても

 考え方を知らないから考えられないよ、

 と思いましたが、

 

 

 周りの人たちは知らないところで

 就きたい職業や志望校をちゃんと決めていました。

 

 

 

 焦った私は、

 「世界史が好き」

 「文系数学なら得意な方だ」

 「当時はホリエモンなどのIT社長が出始めていて、ブームだった」

 という3つくらいの理由で、

 

 

 経済学部を選び、

 「なんとなく東京ではなく関西がいいな」という理由で

 志望校も選び、

 安心したというのが実際のところです。

 

 

 

 

 現在、高校生には、

 「総合的な探究の時間」という時間が

 カリキュラムの中に組み込まれています。

 

 

 (おそらく広島城北では、

 「Discovery」という科目がそれに相当すると思います)

 

 

 

 定義的には、

 「変化の激しい社会に対応して、

  探究的な見方・考え方を働かせ、

  横断的・総合的な学習を行うことを通して、

  よりよく課題を解決し、

  自己の生き方を考えていくための

  資質・能力を育成する」

 という風に設定されています。

 

 

 まさに、高校生の時に自分が受けたかったことです。

 

 

 

 解の公式は習ったけど、

 生き方の公式は習っていません。

 

 

 もしこの「総合的な探究の時間」があったら、

 生き方について考えることができたはず…!

 

 と昔の自分がいたら思うかもしれません。

 

 

 

 

 しかし、今自分自身が

 総合的な探究の時間を設計しているから分かるのですが、

 

 

 この総合的な探究の時間には

 教科書が存在しません。

 

 

 

 いつ、何をしたらいいか、

 指定はありません。

 

 

 総合的な探究の時間は、

 進路決定の方法や生き方を考える考え方同様に、

 マニュアルや公式というのは存在しないものなのです。

 

 

 

 

 一方で、

 私が総合的な探究の時間に関わって、

 10年近くが経とうとしています。

 

 

 その中で、

 探究の発表会を企画することや

 発表会に呼ばれることも多くなりました。

 

 

 中には、

 理数科の発表も聞いたことがあります。

 

 

 

 

 その中で、ある生徒が、

 こんな探究の発表をしていました。

 

 @「どうしたら日貫(ひぬい)にたくさんの人がやってくるのだろうか」

 A「神楽の後継者不足を解消するために、何をしたらいいのだろうか」

 B「農業分野にAIを導入したら、農業生産性は向上するだろうか」

 C「カメムシが家に入ってこないようにするには」

 

 

 あるいは、他校の事例ですが、

 D「なんで探究ってつまらないんだろう」

 E「校則を変えたい!」

 F「練習前と後に味噌汁を接種することで、

   サッカーのパフォーマンスはあがるだろうか」

 というものもありました。

 

 

 

 これらの探究は、

 果たして自分の職業選択に直結するでしょうか。

 

 

 

 

 他者から見ると

 「なんでそんな探究をするの?」と思うものもあるでしょうが、

 

 

 探究のサイクル

 @課題の設定 → A情報の収集 → B整理・分析 → Cまとめ・表現

  → @(新しい)課題の設定→・・・ 

 を経験した彼ら/彼女らが

 このプロセスを振り返ること(リフレクション)が重要です。

 

 

 

 探究をする過程で

 どのように自分の考えが変化し、

 問いが解消され、

 自分の強みや弱みが理解できたのか、

 

 

 自分の世界観(世界の観え方)が

 どのように変わったのか。(あるいは変わらなかったのか)

 

 

 

 


 職業選択という

 直接的なアウトプットはなくとも、

 

 

 職業に付いた時、

 社会の中で生き抜いていく時に、

 発揮される力だと思います。

 

 

 

 

 

 生き抜いていくことは、

 探究そのものです。

 

 

 確かに、

 答えを教えてくれるものは記憶力が試され、

 覚えられなかったら辛いかもしれません。

 

 

 でも、

 そもそも生き方に関する答えは存在せず、

 探究自体も答えがあるわけではなかったのです。

 

 

 

 

 

 高校時代の小林は、

 進路の公式を探し、

 生き方の公式を探したのですが、

 誰も教えてくれませんでした。

 

 

 

 それは当然のことで、

 周りの友達は必死に、

 当たり前のように探究をしていたのだと思います。

 

 

 

 

 

 そんな自分も

 人生経験値を積んでいく中で、

 「探究すること」がなんとなく分かったかもしれません。

 

 

 

 もし高校時代に

 探究することをしていたら…

 

 

 記憶脳ではなく、

 探究脳を鍛えていたら、

 違う人生を歩んでいたのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 在校生の皆さん、

 中学校から高校までのなんと6年間も行う

 「Discovery」はどうですか?

 

 

 ぜひ日頃の「Discovery」を楽しんでいくと、

 今はよく分からなくても、

 後で良いことがあるかもしれません。

 

 

 

 

 

 私も総合型選抜を受験する

 生徒の志望理由や面接練習をしますが、

 

 

 そもそも、

 探究は進路のためにするのではなく、

 

 

 結果として探究したことが

 進路に使えればOKなんだろうなと思います。

 

 

 

 

 ジョン・デューイという

 昔のえらい教育学者さんが、

 

 

 探究とは、

 「そもそも未知のものや不確かなものを理解し、

  それを経験の中で整理し、

  意味のある知識として

  (自身の中に)組み込むプロセス」

 と述べていました。

 

 

 

 そう思えば、

 皆さんが普段立っているサッカーのフィールドには、

 探究しがいがあるだろうなと思います。

 

 

 

 もし今の私が、

 城北で探究するならこんな探究をするだろうな

 というメモを残して本文を終わろうと思います。

 

 

 ぜひ今度、一緒にお仕事しましょう。

 

 

 

 

 それでは。

 

 「なぜプレスをかける戦術に固執するのだろうか?

  オフサイドを取る戦術を捨てて、

  マンツーマンのディフェンスになれば、

  裏を取られることはなくなるのではないか?」

 

 

 「どうしたら〇〇高校に勝つことができるのだろうか?

  〇〇高校とうちとで比較をすることで、

  うちの強みはなんだろうか?

  その強みを活かした戦術はなんだろうか?」

 

 「うちの弱みは△△だと自分では思うが、

  なぜ宮本先生はこのメニューを行うという判断なのだろうか?

  もっと効果的な練習メニューはあるのだろうか?

  他の部活動の練習メニューは参考になるだろうか?」

 

 

 「試合最後まで走り切るためには

  どのようなものを日頃から食べると良いのだろうか?

  また、自分の体には

  どんなプロテインを摂取すれば一番効果的なのだろうか?」

 

 

 「本当に、味噌汁によって

  パフォーマンスはあがるのだろうか?

  なぜパフォーマンスが上がるのかを

  生物的に理由づけるならなんだろうか?」

 

 

 「戸坂地域で、

  サッカー教室を開く活動をすることは、

  部員の増加に貢献するのだろうか?」

 

 

 「相手チームの弱点はどこだろうか?

  ◯番にボールが入った時、ボール保有の時間が短いので、

  むしろあまりプレスをかけずにいた方が

  パニックになってミスを誘発するかもしれないのではないか?」

 

 

 

 ※一点申し上げておくと、

  今小林はあまりテレビを見ておらず、

  サッカーの戦術的なことは一切分かりません。

  的外れかもしれません。

 

  世の中を変えていく要素の一つに、

  「よそ者・若者・バカ者」という言葉があります。

 

 

  「バカ者」の探究だと思ってもらえれば幸いです。

 

 

 

 

 島根県立矢上高等学校

 島根県邑智郡邑南町矢上3921

 ●Webサイト:https://www.yakami.ed.jp/

 ●Instagram :https://www.instagram.com/yakami_hs/

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2024年07月20日    
広島城北高校サッカー部
                      41回生 小林 圭介   

 

 
 

 

 

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